Haskellは、1985年に発表された純粋関数型プログラミング言語です。難易度の高い言語ではあるものの、高度な開発ができます。本記事では、Haskellの概要や環境構築の方法を解説します。
Haskellは、1985年に発表された純粋関数型プログラミング言語です。誕生から数十年経過していますが、今なお使われている言語の一つでもあります。
Haskellは習得難易度が高い言語とされていますが、その分高度な開発が可能な言語でもあるため、Haskellの習得を考えている方もいるのではないでしょうか。
本記事ではHaskellの概要やメリット・デメリット、環境構築の方法を解説します。
目次
Haskellは、1985年に発表された純粋関数型プログラミング言語です。遅延関数言語「Miranda」がHaskellの前身として発表され、実際にHaskellとしてリリースされたのは1990年になります。
純粋関数型プログラミング言語は、関数型プログラミング言語の一種です。一般的な命令型の言語とは違い、関数の定義および関数呼び出しを用いて記述していきます。
命令型プログラミング言語の場合、変数の再代入などの際に副作用で以後の処理や結果になんらかの影響が及ぶ可能性もあります。しかし、Haskellは参照透過性が高い記述のため、そのような副作用がありません。
変数に処理の中で値を代入できる副作用とは、プログラムのコードを読み解くうえで「今この変数にはどのような値が入っているのか」の理解と判断が難しくなることを指します。
変数に値を代入できることでエラーが発生したとき、変数の値を読み解くには変数の前後にあるコードを読み解かなくてはいけません。
そのような場合でも、純粋関数型プログラミング言語の特徴である、変数の値が処理の中で変更できない仕様があることで、コードを一読すれば変数の値をすぐに理解できるのがメリットです。
Haskellには以下の4つの特徴があります。
それぞれ詳しく解説します。
Haskellは、静的型付け言語に分類されます。静的型付け言語とは、プログラム実行前に、プログラムの整合性や合理性を保証する仕組みがある言語のことです。
Haskellは、プログラム上で使われる値の型をあらかじめ定義しておくことで、コードの安全性を確保しています。
静的型付け言語にはほかに「Java」や「C言語」などが該当し、これらの言語にはプログラム実行時の処理が早いという共通した特徴があります。プログラム実行前に整合性が保証されているため、整合性チェックの必要量が少なく済むのです。
型をあらかじめ定義するため、型の整合エラーに気づきやすい点もメリットとなります。
プログラミングの記述方式は大きく「命令型」と「関数型」の2つに分類されます。関数型は単一の処理を関数という単位にまとめ、関数の定義および関数呼び出しを用いてプログラミングしていく方式です。
Haskellは関数型の分類の一つである純粋関数型言語であり、純粋関数型プログラミングサポート機能の豊富な点が特徴です。
関数型言語自体が命令型言語よりも習得難易度が高い傾向にあるため、関数型言語に慣れていない場合は、Haskellのようにサポートが豊富であっても難しく感じるかもしれません。
しかし、関数型言語を使いこなせれば大きな武器になるため、Haskellの習得は今後のキャリア形成においても有用です。
Haskellは、遅延評価方式を採用しているプログラミング言語です。遅延評価方式とは、構成した式をすぐに評価せず、引数を参照する際に遅延して評価する手法を指します。プログラミングにおける評価とは、式や関数の計算をすることです。
この手法は必要なときまで評価を後回しにすることで、必要なときに値をすぐに取り出せるのがメリットです。このメリットにより、効率的にプログラムを実行できます。
遅延評価方式の場合は無限リスト(要素数が無限大であるリスト)の定義が可能です。遅延評価の対義語である正格評価の場合、無限リストを評価しようとすると処理が終わらずエラーになってしまいます。
これは、正格評価のアプローチ方法が計算を「先取り」しておこなう方法だからです。遅延評価が計算を「後回し」にするのに対し、正格評価は式が必要になる前に計算をおこないます。このため、正格評価の言語で無限リストを扱おうとすると、リストの要素をすべて計算しようとしてしまい、結果として処理が終わらなくなってしまうのです。
しかし、遅延評価方式なら必要なときに必要最低限の値のみを返すため、問題なく処理できます。
Haskellは「Cabal」でパッケージ管理をしています。パッケージは、開発に必要な機能がまとまったものであり、多くの種類があるパッケージを管理するためのツールとして「Cabal」が使われているのです。
パッケージには、「ログイン機能パッケージ」や「検索機能パッケージ」などがあり、パッケージを使用することで、自分で一から実装するより効率的に機能を追加できます。
Haskellがもつメリットは、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
Haskellは純粋関数型プログラミング言語であるため、「純粋関数」と「非純粋関数」の区別をしなければコーディングができません。
Haskellは、ほかの言語と比較して、静的型付け・純粋関数型・遅延評価などの特徴があり、ほかの言語と異なる点が多いため習得が難しい言語です。しかし、その難易度の高さゆえにHaskellの考え方はほかの言語でも役立つ場面があるかもしれません。
Haskellは関数やライブラリが豊富なため、効率的な開発が可能なプログラミング言語です。習得難易度が高く、C言語などの命令型言語とは異なる部分が多いため、コーディングするにはHaskellを十分に理解しておく必要はありますが、ほかの言語より速いスピードでシステムを開発できます。
Haskellのような関数型のプログラミング言語は、十分な理解があれば命令型よりも可読性の高いコードの記述が可能です。
可読性の高さは複数人で開発をする際に効果を発揮するため、メリットとなります。
Haskellは、金融やセキュリティ分野など、信頼性の高さが問われる分野で使われることの多い言語です。難易度の高さから使えるエンジニアが少なめなので、Haskellの十分なスキルを習得できれば、さまざまな分野で活躍できる可能性があります。
関数型のプログラミング言語は徐々に注目が高まってきているため、今後の将来性にも期待できるでしょう。Haskellを扱えるエンジニアが少ないからこそ、Haskellを習得することで希少価値の高いエンジニアとして活躍できるはずです。
Haskellがもつデメリットは、主に以下の2つです。
それぞれ詳しく解説します。
Haskellは、非常に複雑な言語のため、学習や言語習得をしにくい面があります。関数型のプログラミング言語なので、ほかの言語から知識を流用できないことが多いためです。
「遅延評価」や「モナド(リストのように、型引数を一つだけ受け入れる型)」といったHaskell特有の性質もあるため、複雑であるとの意見もあります。
Haskellの遅延評価は、プログラム実装時に役立つ場面も多いですが、使い方を間違ってしまうとシステムにかかる負荷が増大します。その場合は、デバッグ作業の負担が大きくなってしまうため、注意しなければなりません。
したがって、場合によってはあえて遅延評価ではなく、正格評価でプログラミングする場合もあるでしょう。
遅延評価と正格評価のどちらがシステムにとって最適なのかを見極めるためにも、遅延評価をよく理解しておく必要があります。
Haskellは、主に以下の分野で活躍しています。
それぞれ詳しく解説します。
Haskellは、信頼性が高いシステムの開発によく用いられており、金融に関する分野もその一つです。主に、銀行や証券会社、金融取引所などのシステム開発や保守点検、財務分析などの金融系のサービス・アプリで使用されています。
金融に関する分野でHaskellが使われる理由は、コードを読み解かないと変数の値がわからない「副作用」がないためです。金融系のサービス・アプリでバグが発生してしまうと非常に大きな損害となってしまう可能性があります。
したがって、副作用がなく、命令型よりもバグが起こりにくい関数型の言語が採用されているのです。
Haskellは、セキュリティ基盤の構築にも使われています。オンライン契約や電子入札などで使われているほか、マルウェアやスパム対策などのセキュリティ対策にも利用されている信頼できる言語です。
海外では、Facebookを開発した「メタ社」がHaskellを使用しており、ほかにも金融系の大企業などで使用されています。
ただし、Haskellを使用している企業は多いとはいえません。とくに、規模の小さいベンチャー企業などではほとんど使用されていないのが現状です。優秀な言語ではあるものの、習得難易度が高く開発費用も高額な傾向にあるのが、開発で採用されない要因といえます。
関数型の言語であるHaskellは、数学的な検証が可能なため、科学・医療といった研究に関する分野でも使われています。主に、データ分析や科学的な解析に使われており、暗号の解析やデジタル信号の処理などでも活躍中です。
医療に関する分野では、電子カルテの開発に採用された実績もあります。科学・医療分野ともに今後も技術の進化が予想されるため、Haskellも引き続きこれらの分野で採用されていくと考えられます。
最後に、Haskellの開発環境を構築する方法について解説します。Haskellの開発環境を構築する手順は、以下の通りです。
はじめてHaskellを使用する方は、ぜひ参考にしてください。
まず、StackをOSにインストールしてください。StackはHaskell用の開発ツールで、パッケージのインストールやプロジェクトのビルド・テストといった基本的な機能が備わっています。
Windowsの場合は、The Haskell Tool Stack(下図赤枠部)のインストーラーをダウンロードし、起動してインストールしてください。
そのほかのOSは、ターミナルから
curl -sSL https://get.haskellstack.org/ | sh
または
wget -qO- https://get.haskellstack.org/ | sh
を入力することでインストールできます。
インストールが完了したら、正しくインストールできているかを確認しましょう。コマンドプロンプトに「stack –version」と入力することで確認できます(下図参照)。
インストールが完了したら、Haskellでプロジェクトを作成してください。プロジェクトを作成する際は、「stack new」コマンドを使用します。
以下のように、stack newに続けて作成したいプロジェクト名を指定すれば作成できます。
stack new hw-project
プロジェクトを作成すると、以下のファイルが自動で生成されます。
プロジェクトを作成したら、次はセットアップです。プロジェクトをセットアップする際は、「stack setup」コマンドを使用します。
以下のように入力することで、セットアップが開始されます。
stack setup
上記のコマンドを実行すると、Haskellのコンパイラである「GHC」のダウンロードとインストールがはじまります。インストールには時間がかかるため、気長に待ちましょう。
インストールしたGHCは、以下のコマンドで起動できます。
stack ghc
stackが参照しているパスを確認するコマンドは、以下の通りです。
<すべてのパスを確認したい場合>
stack path
<stackのルートパスを確認したい場合>
stack path –stack-root
<stackの保存先を確認したい場合>
stack path –local-bin
次にプロジェクトのビルドと実行をします。
プロジェクトのビルドを実行するコマンドは、以下の通りです。
stack build
ビルドを実行する際、オプションの利用も可能なので必要に応じて利用してください。
オプションは以下のコマンドで確認できます。
stack build –help
比較的使う機会が多いオプションは、「fast」や「file-watch」です。「$ stack build –fast」で最適化を無効に、「$ stack build –file-watch」でファイルが編集されていれば、自動でリビルドしてくれます。
コンパイルしたプログラムを実行する際は「stack exec」コマンドを使用します。以下のように入力しましょう。
stack exec hw-project-exe
最後にHaskellでHelloWorldと表示してみましょう。「hw-project/app/mail.hs」ファイルを開き、「someFunc」の箇所を以下のように変更してください。
module Main where import Lib main :: IO () main = putStrLn “HelloWorld”
変更完了後、再度プロジェクトのビルドと実行をすると「HelloWorld」と表示されます。
本記事ではHaskellの概要やメリット・デメリット、環境構築の方法を解説しました。Haskellは信頼性が高く優秀なプログラミング言語です。一方で関数型の言語なので習得難易度が高い言語でもあります。
独自の要素も多いため、習得には多くの時間がかかるものの、Haskellを習得しているエンジニアは少ないため、習得することで貴重な人材となることが可能です。Haskellを習得していると強みになると考えられます。
今後のキャリア形成にも役立つため、Haskellを学んでエンジニアとしての希少価値を高めてみてはいかがでしょうか。
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